著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15
被引用文献数
5 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする<オープンコミュニケーション>構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才帥の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
宮本 雅人 酒井 浩之 増山 繁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.752-760, 2006-10-15
被引用文献数
1 2

研究のプレゼンテーションでは,限られた時間の中で,聴衆に研究成果をよく理解してもらうために,プレゼンテーションスライドの作成が必要不可欠である.しかし,スライドの作成には多くの時間と手間を要する.そのため,多くの研究者がスライド作成の効率化を望んでいる.本研究では,研究者の負担軽減を目的として,論文LATEX原稿からスライドを自動生成する手法を提案する.本手法では,LATEXファイルの解析,スライドへの内容の割り当て,接続詞を利用した箇条書き生成を行なう.LATEXファイルの解析では,スライド生成に必要な情報は残し,不要な情報の削除を行なう.LATEXファイルの定型的な構造を利用すれば,必要な情報を特定することが可能である.スライド割り当てにおいては,論文中での名詞の出現頻度,エントロピー,idf値に基づいて名詞の重要度を計算する.その重要度に基づいて,各セクションに対して,スライド枚数の割り当て,重要文の抽出を行なう.接続詞を利用した箇条書き生成においては,並列関係を表す接続詞を利用する.なぜなら,並列関係を表す接続詞を含む文には,その文と対になる文が存在する場合が多いからである.評価の結果,本手法は論文に忠実なスライド生成に有効であることがわかった.
著者
松村 真宏 市橋 歩実
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.733-743, 2010-12-15
被引用文献数
3

本論文では,誰もが地域に関する情報を書き込み,他者と共有することができる「らくがきマップ」を呼ぶ地図型コミュニケーションツールを提案した.らくがきマップに対する住民の反応およびらくがきマップを介したコミュケーションや意識変化に関する示唆を得るために3つの実証実験を行った.らくがきマップの形跡調査,参加者の行動観察やインタビュー,アンケート調査の結果,らくがきマップは小学生から高齢者まで世代を超えた幅広い年代に利用され,住民の地域情報の発信・共有のニーズが十分にあることを明らかにした.また,住民の書き込みによってらくがきマップが作られるという住民主導型の参加スタイルが,住民に自らのまち情報を振り返るきっかけを与えたり,地域への愛着を高めることを示した.
著者
小西 健太 村田 忠彦 名取 良太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-210, 2010-04-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

本論文では,投票率上昇と投票所数削減のための投票シミュレーションを提案する.まず,有権者の投票と棄権の2つの効用関数を設定する.次に,区域ごとに,それらの効用関数を組み合わせる投票係数を調整する.実際の投票率を用いた調整プロセスにより,各区域の実投票率と予測投票率の差を最小化する.さらに推定された投票係数を用いて,2目的遺伝アルゴリズム(NSGA-II)による投票率最大化と投票所数最小化を行う.これにより,投票所数を維持したまま,投票率が上昇する投票区割りの最適化や,投票率を維持した投票所数の最小化を行うことが可能となる.
著者
鬼沢 武久 風見 覚 高橋 千晴
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.127-141, 2003-02-15
被引用文献数
2

ゲームには相手と自分の手がわかる完全情報ゲームとお互いに相手の手が完全にはわからない不完全情報ゲームとがある。将棋やチェスのような完全情報ゲームでは強いアルゴリズム開発を目指したコンピュータ将棋やチェスの研究が盛んで、世界チャンピオンやアマ有段者並みの強さを持つアルゴリズムが開発されている。一方、不完全情報ゲームでは不確実な情報のもとで相手の手の強さやゲーム戦略を推論しなければならず、その推論結果には不確実性が伴い、完全情報ゲームと比べると強いアルゴリズムを開発するまでにはいたっていない。本論文では、不完全情報ゲームとしてセブンカードスタッドポーカーを例にして、そのプレイングシステムを構築することを目的とする。本システムでは対戦相手の傾向に応じた意思決定を行うために後件部が確定していない、そして閾値をもった変則のファジィルールを用い、対戦相手の傾向に応じてルールを修正する。本システムは、この変則的なファジィルールを用いたファジィ推論によって、相手の見えているカードと相手の賭け金とから、自分の手の優劣推定やゲームを続行するかどうかの判断、自分の賭け金の判断を行う意思決定システムである。本システムの有効性を確認するために、人間プレーヤと1対1のゲームを行い、そこから得られたデータを解析している。
著者
岡部 貴博 吉川 大弘 古橋 武
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.689-700, 2006-10-15
被引用文献数
3 5

現在,多くの病院では,医療従事者が勤務中に遭遇したヒヤリとしたこと,ハッとしたことをレポート形式で報告する制度が採用されている.このレポートはインシデントレポートと呼ばれており,事故の種類や発生場所などのメタデータと,大部分は自由記述の文章で記されている.インシデントレポートには,ヒューマンエラーを起こしやすい状況や,病院のシステムの改善点,事故の要因などの様々な重要な情報を含んでいることが多いため,インシデントレポートを解析することは医療事故を防止するための対策を発見するのに有用である.しかしこれまでは,定量化しやすいメタデータ部分を用いて,事故の発生件数の推移や,業務別の報告件数の割合を分析したり,病棟や部署での報告件数を比較するだけにとどまっている.そのため,事例の大まかな傾向をつかむことはできても,各事例の中に含まれている重要な情報の解析はできていない.一方で近年,自由記述の文章から有益な情報を抽出する,テキストマイニングに関する研究が盛んに行われている.本論文では,メタデータと語句の共起情報を利用したテキストマイニング手法を提案し,インシデントレポート解析への適用を行う.提案手法は,メタデータを最上位とする階層構造で表現されたキーワードグラフを作成する.また,解析者が能動的に解析したい項目を掘り下げていけるという特徴を持つ.実際のインシデントレポートを対象とした評価実験により,提案手法の有用性を検証する.
著者
中岡 伊織 谷 久壹郎 亀井 且有
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.631-640, 2005-10-15
被引用文献数
1

ポートフォリオは株価の変動から期待収益率とリスクを算出し, 最適な有リスク資産運用を目的としている.従来手法として様々な手法が提案されているが, 過去の期間での投資システムや単純に株価を予測するシステムしか提案されていず, 現実問題に適用可能な意思決定システムは未だ提案されていない.一方, 有リスク/無リスク資産分配においても, 従来法はポートフォリオによる銘柄選択とは独立して, 一般的な指標を用いてその分配比が求められており, 有リスク資産運用を考慮した最適有リスク/無リスク資産分配とは言い難い.本論文では, 分散投資の観点から自己組織化マップ(SOM)を用いて同様の経営指標を有する銘柄への複数投資を避けながら, 幅広く株式投資銘柄を選定し, またその選定銘柄の経営指標を用いてファジィ推論により, 有リスク/無リスク資産(株式/国債)の投資資産分配をする手法を提案する.また, 提案手法を実株価データへ適用し, TOPIXを用いた場合より受取額が多く, 2000年以降のITバブル崩壊のような株価急変に対しても有効な投資を行えることを示す.
著者
山脇 一宏 椎塚 久雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.615-621, 2005-10-15
被引用文献数
2

共感覚保持者, とりわけ音と色彩に関する共感覚保持者(色聴保持者)の存在については, メシアン, スクリャービンの例が有名であるが, そのような色聴保持者の報告から音と色彩の協調的な関係の存在が想起される.著者らは, 音と色彩の協調的な関係に注目し, 色彩のイメージ分析に使われているカラーイメージスケールを利用した音楽の特徴抽出を試みる.音楽専攻の大学生らに対するアンケート調査を行った結果, 音楽の微細な特徴を抽出することができた.共感覚および共通認識に関する様々な議論に一つの実証を与えることもできた.
著者
加藤 浩介 坂和 正敏 片桐 英樹 小川 篤
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.402-411, 2007-08-15

多目的確率計画問題に対して,従来,期待値最適化モデルや分散最小化モデルに基づいて意思決定者の満足解を導出するための方法が提案されてきている.しかし,これらのモデルに基づいて得られる解と,不確実な意思決定状況で意思決定者が目的関数に対する満足度を表す効用関数の期待値を最大化しようとするという期待効用最大化原則に基づいて得られる解の整合性は保証されていない.一方,確率変数の分布関数を積分した二次分布関数の大小関係により確率変数を順序付けする二次確率優越という概念があり,目的関数に対する意思決定者の効用関数がリスク回避的である場合には,二次確率優越は期待効用最大化原則と整合的であるという性質がある.そこで,本研究では,多目的確率計画問題に焦点をあて,二次確率優越の概念に基づくパレート最適性を定義し,期待効用最大化原則と整合的な満足解を導出するための対話型ファジィ満足化手法を提案する.
著者
福島 隆寛 内海 彰
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.239-249, 2007-06-15
参考文献数
14
被引用文献数
11 1

本論文では,Web ページに記載されている情報の信頼性(Web ページの信頼性)を,そのWeb ページやそこに含まれているテキストのさまざまな特徴から推定する手法を提案する.提案手法は,信頼性判断に影響を与える各特徴が推定対象のWeb ページで成立しているかどうかを自動判定する処理と,成立すると判断された特徴からそのWeb ページの信頼度を求める処理から構成される.どのような特徴が信頼性判断に影響を及ぼすかについては,アンケート調査を実施して,68個の特徴とWeb ページの信頼性への影響度を得た.本研究では,それらのうちの40個の特徴(信頼性の尺度)の成立を自動判定する手法を開発した.また信頼度を計算する手法として,影響度の総和を取る方法とSupport Vector Machineを用いた機械学習により信頼度を求める手法を開発した.そして,評価実験を通じて,信頼性の尺度の判断処理の有効性と信頼できる/信頼できないページの二値分類に対する提案手法の有効性を確認した.
著者
大礒 正嗣 松村 嘉之 保田 俊行 大倉 和博
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.18-28, 2011-02-15
被引用文献数
4

多数の演算器を持ち並列計算可能な Graphic Processing Units(GPU)は,近年,CPU をはるかに上回る演算性能を持つようになり,GPU を用いて数値計算を高速化する研究が多くなされている.進化計算の計算量に対しても GPU 計算が注目されており,遺伝的アルゴリズム(GA)の分野において,集団の並列化についていくつかの議論が緒についた.本稿では,GPU 向け開発計算環境である CUDA を利用して,集団の並列化だけでなく個体単位での並列化を行うことによりGAの高速化とオーバーヘッドの隠蔽を行う実装手法を提案する.進化計算のベンチマークである関数値最小化問題とアプリケーションである進化ロボティクス問題に対して提案実装手法を適用し,計算機実験を行った.結果として,提案実装手法は従来の CPU による計算に対して 7.6~23.0 倍の高速化を達成した.
著者
松村 真宏 加藤 優 大澤 幸生 石塚 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.554-564, 2003-10-15
被引用文献数
17

議論の論点をすばやく発見し理解するためには、議論構造を可視化してユーザに提示することが有効である。そこで本稿では、議事録から話題の単位(セグメント)を同定し、さらに同定したセグメント間の関連を調べることにより、議論構造を構造化マップとして可視化するシステムを提案する。また、構造化された議論に影響の普及モデルIDMを適用することにより、議論の発展のトリガとなる話題を発見することを試みる。アンケートによる調査の結果、適度に議論が分割・構造化された構造化マップは、ユーザが議論の論点を直感的に捕らえるための手がかりを提供していることを示す。また、IDMにより同定された話題は、構造化マップにおける入次数、出次数に着目した結果よりもPrecisionが高いことを示す。
著者
廣澤 一輝 長名 優子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-38, 2010-02-15

本論文では,ニューラルネットワークを用いた MaC モデルに基づく感情生成システムを提案する.提案システムは,感情を価値判断に用いる心のメカニズムと,選択的注意や反射・熟考のプロセスを処理する意識のメカニズムという2つのメカニズムを持つ心と意識の概念モデルであるMaC(Mind and Consiousness)モデルに基づいたモデルであり,MaC モデルの感情生成部分にカオスニューラルネットワークとボルツマンマシンを導入している.ボルツマンマシンは同じ入力に対して確率的に複数の出力を行うように学習させることができる.提案システムでは,この性質を利用することで,同じ外部入力に対しても時には違った感情が生成されるという人間らしさを実現する.一方,カオスニューラルネットワークは外部入力と履歴を考慮して学習したデータを動的に出力することができる.提案システムでは,この性質を利用して,過去の履歴を考慮した感情の生成を行い,人間らしさを実現する.計算機実験とロボットを用いた実験を行い,提案システムにおいて,外部入力のみに依存しない自然な感情生成が行えること,提案システムを実装したロボットにおいて手動で操作したロボットに近い自然な行動が実現できることを確認した.
著者
目良 和也 市村 匠 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-24, 2010-02-15
被引用文献数
1 8

現在,音声によるインタフェースに対する注目は年々高まっており,応用システムとしても,さまざまな用途のアプリケーションが開発されている.このような人間とインタラクションを行うエージェントにとって重要な機能として,人間の意図の理解,エージェントの行動の決定,エージェントの状態表出の3機能が挙げられるが,本研究では特にエージェントが自身の感情状態を表出する機能に注目する.本研究では,CGエージェント型の音声情報案内システムである「たけまるくん」に対してエージェントの感情を付与することで,より親しみやすいコミュニケーションを実現することを目指す.「たけまるくん」はユーザ発話を想定した質問文データベースを持っており,それぞれの質問文には,応答文とエージェントのリアクション動画が対応付けられている.そして音声入力からスコアリングにより質問文が選択され,リンクされた応答文とリアクション動画を出力する.本手法では,まず情緒計算手法を用いてユーザの発話内容に対するエージェントの生起情緒を計算する.次に,気分の変化を状態遷移によって表すため,心的状態遷移ネットワークを用いる.これにより気分状態はエージェントの生起情緒をもとにして心的状態遷移ネットワーク上を連続的に変化していく.各気分における固有の応答文データベースとリアクションデータベースを作成することで,質問文に対し気分によって異なる反応を返す.さらに,事前に計算され質問文に付与された生起情緒を基に気分の遷移を行う.生起情緒は,入力文,応答文,リアクション,気分の4つのセットに対して計算される.そのために,まずこのセットを人間が認識および行動したときに心の中で認識される事象を抽出し,その事象に対して情緒計算手法を適用することで生起情緒を計算する.そして,生起情緒と心的状態遷移ネットワークの遷移コストをもとに7種類の気分状態を遷移する.従来のエージェントと本手法のエージェントに対する印象を18の形容詞に対し評価した結果,本手法においては好感因子の平均得点が高く,性格に関する項目においては,「やんちゃ」や「不真面目」の項目の平均得点が従来手法に比べて高かった.使用感に関する項目では,「楽しめそう」の項目で高い平均得点を得た.本手法は従来手法より好ましい印象を与え,エージェントが性格を持っているように感じられることから,本手法に基づくエージェントに対して,ユーザがより親しみを感じているといえる.